2016/06/13
院長日記
先天的な紫外線による皮膚障害
6月もそろそろ半ばになります。
今年の梅雨は関東では晴天の日もちらほらで、紫外線も気になるところかと思います。
前回は紫外線によるアレルギーで生じる疾患についてお話ししました。
今回は紫外線によって遺伝子に傷ができた際に、それを修復する作用が異常であるために起こる疾患「色素性乾皮症(しきそせいかんぴしょう)」についてお話しします。
紫外線により遺伝子( DNA )に傷ができた時、その傷を修復しようとする作用があります。
この作用が先天的に異常であるために、日光に対して極めて敏感となる遺伝的な疾患を「色素性乾皮症」と言います。この疾患にはいくつかのタイプがあり、日本では最も重篤なタイプと比較的軽症なバリアントと言われるタイプが多く見られます。
重篤なタイプは幼小児期から数分の外出で、顔や手、腕などの露出部に強い紅斑や水疱、浮腫などが頻発し、その後小さな褐色斑や色素脱失斑、皮膚の強い乾燥や萎縮が生じます。
また、若年から皮膚の癌が見られたり、歩行障害や知能障害などの神経症状も及ぼすタイプです。
このタイプでは、比較的早期に診断されることが多く、極力症状が進行しないように、厳重な遮光を行います。
もう一つのバリアントは紫外線を浴びても、上に挙げた様な劇的な症状は出ず、多少正常な人よりも日光過敏が強く出たり、露出部にそばかすのような小さなシミが徐々に出現しますが、神経症状は見られません。よって、診断されずに紫外線を長年浴びてしまい、成人以降に露出部に皮膚癌が多発する場合があります。
幼少期から顔や腕といった露出部にそばかすのような小さい褐色斑が多発したり、紫外線を浴びると通常よりも赤みが強く出たり、その赤みが長引いたりした場合には、皮膚科を受診するとよいでしょう。
色素性乾皮症の診断は、紫外線に対してどのぐらい反応するかを確認したり、特殊な遺伝子の検査をします。
紫外線には急性的な皮膚障害だけでなく、長期間浴びると将来的に光老化を起こすことが分かってきました。それだけでなく、紫外線のアレルギーであったり、紫外線を浴びること自体が疾患を悪化させるものもあります。
関東では6月から8月が紫外線のピークと言われています。6月は梅雨のため、日照時間自体は少ないかもしれませんが、晴れの日はもちろんの事、曇天であっても紫外線は晴れの日の70パーセントは降り注いでいるそうですので、紫外線対策は忘れないようにして下さい。