2018/08/12
院長日記
汗で誘発される蕁麻疹について
久しぶりの投稿になってしまいました。
ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、クリニックのホームページがリニューアルされました。
当クリニックの情報をより見やすく、わかりやすく変更しました。
院長日記も引き続き皮膚疾患の最近の話題、時期的に問題となる事などをアップしていきたいと思います。
今後とも宜しくお願い申し上げます。
さて、今年は例年にない猛暑が続き、心身ともにお疲れの方が多いのではないでしょうか。
なんでも30年に一度程度の頻度で起こる現象とのこと。
冷房の中で過ごすことにすっかり慣れた体になってしまったようで、外に出るとすぐさま汗がどっと出てきて、途端に洋服がびっしょり濡れてしまいます。
今回は汗で誘発される蕁麻疹「コリン性蕁麻疹」についてお話しします。
蕁麻疹は色々なタイプがありますが、多くは体が温まると誘発されます。
その中でも汗をかくことでチクチクとした痛みとともに点状にボツボツと出てくる蕁麻疹を「コリン性蕁麻疹」と言います。
しかし、この蕁麻疹は汗をたくさんかく人より、むしろあまり汗が出ない人に多く、「熱がこもってチクチク痒くなる」といった症状から気づく人もいらっしゃいます。
また、若い男性にも多いという統計もあります。
この蕁麻疹の病態はまだ完全に解明されているわけではないのですが、
脳の体温調節を担っている中枢から「汗をかけ」という指令が出た際に神経から分泌されるアセチルコリンが汗の管を刺激するのではなく、蕁麻疹の原因である肥満細胞を刺激してしまい、蕁麻疹が出現するという説。
汗の管がなんらかの影響で壊れたり、詰まったりして、汗自体が外に出られなくなり真皮に漏れ出る。汗にアレルギーがあるために、漏れた汗で蕁麻疹が出るという説があります。
「汗にアレルギーがあるなんて!」とびっくりされるかもしれませんが、実際にアトピー性皮膚炎の患者さんやコリン性蕁麻疹の患者さんにご自身の汗を薄めて皮内に注射すると、アトピーの患者さんで約80%ほど、コリン性蕁麻疹の患者さんで約65%ほどの方が赤みを及ぼす、つまりはアレルギー反応が出るという報告もあるのです。
蕁麻疹の治療は抗アレルギー剤が第一選択ですが、「コリン性蕁麻疹」の場合は抗アレルギー剤は効かない場合も多くあります。
その場合はステロイド内服療法が著効するという報告もあります。
そのほか、鎮静効果のある内服薬を使用したり、H(ヒスタミン)2ブロッカーを使って効果のある方もいらっしゃいます。
この時期は「外に出た途端、蕁麻疹が誘発される」「少し歩いただけでも、チクチク痒くなる」とかなり辛いとおっしゃる方もいらっしゃいます。
しかし、根気よく治療をしたり、薬の調整を定期的に行っていく事で改善する場合もあります。
中々治療に反応しなくても、焦らず、かつ自己中断する事なく、薬の効果がどの程度出ているのかをご自身と医師で冷静な判断で確かめながら、効果のある治療法を見つけていくことが大切です。