2021/01/08

院長日記

アトピー性皮膚炎の治療薬「デュピルマブ」

あけましておめでとうございます。

例年では明るいニュースでご挨拶したいところですが・・・

コロナウイルスの感染者が爆発的に増え、緊急事態宣言が再度発令されました。

東京では連日2000人超の感染者が報告され、重症者も増えています。

今後重症であっても入院ができない可能性があるとの事。

医療崩壊が寸前である今、皆が気を引き締めて、決して他人事ではないことを再認識し行動していかなければならないと感じています。

「コロナ疲れ」という言葉もちらほら耳にしますが、この冬の時期をどう乗り切るかが今後の生活を大きく変えると思います。

年始早々、メデイアもどこもかしこもコロナ関連のニュースばかりですが、再度気を引き締めて感染者を増やさない努力をしていきたいと思います。

どうぞ今年1年も宜しくお願い申し上げます。

さて、今回は「アトピー性皮膚炎の治療について」2018年に国内で承認された注射薬「デュピルマブ(商品名:デュピクセント)」についてお話しします。

アトピー性皮膚炎の治療といえば、ステロイドや免疫抑制剤の外用、抗ヒスタミン薬の内服でかゆみや湿疹を抑えるのが主流です。

また、症状がひどい状態であれば、最低でも一週間に1回紫外線を照射したり、免疫抑制剤の内服をすることもあります。

 

ただし、中々これらの治療が奏功しないこともありますし、定期的かつ頻繁な通院が難しいという方もいらっしゃいます。

そういった従来の治療に奏功しない患者さんへの治療として「デュピルマブ(商品名:デュピクセント)」という注射薬を投与する選択肢があります。

これは、「サイトカイン」という物質を抑制する注射薬です。

「サイトカイン」とは免疫細胞から作られる物質で、主に病原体やがん細胞などを身体から追い出すために必要な物質です。

約800もの種類が確認されていますが、その中の一部のサイトカインが異常に増えることで逆に身体に悪影響を及ぼすことがあります。

「アトピー性皮膚炎」もその一つです。

この「サイトカイン」が異常に増えないようにする薬がまさに「デュピルマブ(商品名:デュピクセント)」です。

 

異常に増えたサイトカインが及ぼす皮膚への影響は、かゆみのもとである「ヒスタミン」を異常に排出したり、アレルギー反応を増強させたり、皮膚のバリア機能を低下させます。

「デュピルマブ」は従来の治療法である、内服薬や外用薬かつ紫外線療法の全てをカバーできるといっても良いかもしれません。

デュピルマブは初回に2本の注射を打ち、後は2週間間隔で1本の注射を打ちます。

ご自宅での自己注射も可能です。

初回は病院で注射を行いますが、その際に注射方法の指導を受ければ、それ以降はご自宅で注射も可能です。

 

ただし、デュピルマブ注射薬の金額は高額です。

ご自身のもしくはご家族の収入に応じて、高額医療費として国の補助を受けていただく制度もありますので、高額な治療費を支払うのが難しい場合でも救済措置があります。

 

アトピー性皮膚炎は慢性的に強いかゆみが続き、患者さんのQOLを著しく損ないます。

夜間のかゆみで睡眠障害を引き起こしたり、昼間の仕事や学業がきちんとできない方もいらっしゃいます。

そして、なかなか治療をしても治りが悪い、抗アレルギー剤を内服すると眠気が出てしまう、外用剤をほぼ全身に塗るのは生活パターンとして時間がないなど、現在の治療法が難しい場合は検討しても良いと思います。

 

アトピー性皮膚炎の新しい治療、「デュピルマブ(商品名:デュピクセント)」について、詳しくお聞きになりたい患者さんは診察時に医師にご相談ください。