2021/06/03

院長日記

多汗症と治療について

ここ最近、天気が良く少し汗ばむくらいの気温の日も増えてきました。

今はまだ湿度が低く気温も心地よく、うだるような天気ではありませんが、確実に今年も真夏にはそういう天気が続くことでしょう。

そしてこの季節には「汗」に悩まされる方も増えます。

今回は汗に関するトラブル、「原発性多汗症」についてお話しします。

これは他に原因がないにもかかわらず、汗が多く、生活に支障が出る疾患です。

本来汗は緊張が高まったり、温熱刺激で分泌されますが、

そういった刺激がなくても日常生活に支障が出るほどの汗が出てしまうという状態です。

 

この中でもわきや手のひらなど体の特定の部位の汗が多い状態を「原発性局所多汗症」と言います。

日本での調査では、「原発性局所多汗症」の頻度は12.8%。計算上では8人に1人に症状があることになります。

部位別ではわき、手のひら、頭の順に多いようです。

 

本来汗は運動や温熱刺激、緊張の高まりで分泌が高まりますが、

「原発性局所多汗症」では常に体の一部で汗の分泌が多く、洋服が濡れたり、臭いに悩まされたり、汗がだらだらと出ることで人の目が気になったりということで精神的に悩まれている方もいらっしゃいます。

「原発性多汗症」の治療は「塗り薬」「注射薬」「手術」「内服療法」が行われます。

 

わきの多汗症に対しては、「エクロックゲル」という薬剤が発売され、保険での治療が可能になりました。

1日1回、わきに外用する事で、汗の分泌を抑えられる薬剤です。

汗が出る時には皮膚に存在する交感神経から「汗を出せ~!」と指令が出るのですが、それを遮断する効果のある薬剤です。

 

そのほかにも塗り薬には「塩化アルミニウム」を1日1回外用する治療もありますが、保険適応ではありません。

また「注射薬」では「ボトックス」つまりは「ボツリニス菌」を神経に作用させることで神経麻痺を起こして汗を抑える治療もあります。

これは保険適応の治療(病院によっては自費治療になります)ではありますが、実際には片方のわきに対して注射薬を数十箇所打つので、痛みを伴うといったデメリットがあります。

 

その他の「手術療法」は体に侵襲を伴い入院も必要です。

よって手軽にできる治療ではありません。

 

「内服療法」は精神的な緊張を取る薬剤を使用するため、日常的に眠気やふらつきなどが出ることもあります。

よって、まずは生活のリズムを崩さず、かつ痛みなどの侵襲のない治療から開始されると良いかと思います。

 

「多汗症」は比較的若い方に多い疾患です。学生さんや社会人など割と人との関わりの多い年代に多い疾患だからこそ、人の目が気になったり、不安になったりすることでしょう。

詳しく治療について相談されたい方はご相談ください。