2021/10/04
院長日記
疥癬(かいせん)について
前回は「マダニ」についてお話ししました。
今回はダニの一種である「疥癬(かいせん)」についてお話しします。
なんともおぞましい名前の「疥癬」ですが、これは「ビゼンダニ」と呼ばれるダニが皮膚に寄生する皮膚感染症です。
通常の生活ではあまり感染することはありませんが、
ご高齢の方が入所されている施設や病院で感染することが多く見られます。
ビゼンダニのメスはオスと交尾をした後に、手首や手のひら、指の間、脇の下、外陰部などに潜り込み、卵を生みつけます。
そして卵が孵るとまた成虫が交尾をして、次々と皮膚に卵を産みつけては皮膚に寄生するというライフサイクルを送ります。
症状は赤いボツボツが腹部や腰、脇などに見られたり、
卵を産みつけた部位は皮膚が少し盛り上がって皮膚がふやけたような状態になっています。
また、疥癬が治療されないまま放置されると、ボツボツだけではなく、全身に固いアカがついた状態、アカの鎧をつけたような状態になります。
この状態を「角化型疥癬(かくかがたかいせん)」と言います。
そして猛烈な痒みもあり、特に「ビゼンダニ」が活動する夜間には痒みが強くて眠れないということもあります。
診断は皮膚を実際に採取し、顕微鏡で「ビゼンダニ」の卵や成虫を確認します。
疥癬の診断がついたら、駆虫剤である内服薬を処方したり、殺虫剤のローションを外用します。
さて、通常の生活を送られている健常な方では「疥癬」になることは滅多にありません。
「疥癬」は免疫力や抵抗力が下がった寝たきりのもしくはそれに近い状態の方に感染することが多いからです。
私たち皮膚科医が「疥癬」を疑うのは、
1ご高齢であること
2老人施設などに出入りしている、もしくは入院している
3ご高齢の方の介護をされている
4実際に「疥癬」の患者さんと同居、介護している
という点です。
ちなみに、通常の疥癬であれば、長い時間肌が触れ合ったり、疥癬の患者さんが使用した寝具や衣類、タオルをすぐに使ったりしなければ移りません。
しかし、「角化型疥癬」の場合はビゼンダニが数百万匹も皮膚に存在すると言われており、実際に皮膚から剥がれたアカの中にもビゼンダニが潜んでいます。
よって、接触の機会がある場合は手袋や予防のためのガウンを着たり、使用した衣類、寝具、タオルなどはビニールなどで一旦密閉し、洗濯も別にしたりと感染しないよう要注意が必要です。
元々皮膚炎などとはご縁が無かった、
皮膚炎を治療しているのにひどくなる一方だ。
ご高齢で老人施設などに入所や一時的に入院したなどなど・・・
お心当たりのある方は、一度皮膚科にご相談ください。