2022/12/12

院長日記

アトピー性皮膚炎の「痒み」に対しての新薬

今回はアトピー性皮膚炎の「痒み」に焦点を当てた治療法についてお話しします。

アトピー性皮膚炎の患者さんは、健常な皮膚の方に比べると、痒みをかなり敏感にキャッチすると言われています。

その原因は、皮膚のバリア機能(皮膚内部を守るバリケード)が弱いため、常に皮膚内部にアレルゲンを取り込んでしまうから。

その他にも痒みを感じる神経線維が皮膚の表面まで伸びているからです。

皮膚をかくと、皮膚が傷つき、さらにバリア機能は弱まり、さらに痒みが増してしまいます。

 

従来の一般的な治療は、皮膚の炎症を抑えるべく「ステロイド外用剤」や「タクロリムス」「デルゴシチニブ」「ジファラミスト」などを外用したり、

「抗ヒスタミン剤」を内服することで直接的に皮膚の痒みを抑える治療です。

ただ全身に痒みや湿疹がある患者さんでは、これを毎日続けていくことも大変な負担となることもあるでしょう。

また、湿疹が悪化している状態が続いていると、薬を外用したり内服しても直ぐに痒みから解放されるわけではなく、患者さんによっては諦めてしまわれる方も。

 

こういった状態に対して痒みの原因となっている大元であるIL31(インターロイキン)の働きを抑える新しいくすり「ミチーガ(ネモリズマブ)」が使用できるようになりました。

通常4週間に1回ずつ病院で皮下注射をします。

 

この薬は体の免疫に関わる「インターロイキン」の働きを抑えるため、皮膚感染症や上気道炎などの全身性の感染症が現れることもあります。皆さんに起こる副作用ではありませんが、注意が必要です。

また13歳以下のお子様では安全性が確立されていないため投与はできません。

妊娠や授乳をされている場合も投与は控えた方が良いでしょう。

 

薬価は月1回使用した場合、3割負担の方で35154円になります。(2割負担:23436円・1割負担:11718円)

 

少し高額にはなりますが、痒みが辛くて仕事や勉強がはかどらない、夜間の痒みで睡眠が障害されるなど生活の質が下がっている方であればご検討されても良いかもしれません。

お話だけでもお聞きになりたい場合は診察時に医師にご相談ください。