2023/08/24

院長日記

アトピー性皮膚炎 外用薬のお話し

今回はアトピー性皮膚炎の「外用薬」についてお話しします。

アトピー性皮膚炎の患者さんは、皮膚のバリア機能が常に弱い状態です。
バリア機能が弱いと、皮膚の慢性的な痒みや皮膚内部に侵入してくる様々な因子に対し炎症を起こしやすい状態が続いています。

痒みがあると、つい引っ掻いてしまいますが、引っ掻く=皮膚に傷をつけることになります。
皮膚が傷つくと、バリア機能がさらに壊れるだけでなく、傷のついた皮膚の細胞から痒みが増す因子が出てきます。

そうすると、さらにバリア機能は壊れるわ、痒みは強くなるわ、という悪循環に陥ってしまいます。

そう考えると、「皮膚を掻く」行為自体をコントロールすることが重要だとわかります。

皮膚の痒みがあるからこそ、掻いてしまうのであれば、
痒みを抑える内服薬を定期的に飲むことも治療の一つです。

ただ、痒みが皮膚のバリア機能が壊れていることや、湿疹のある部位にアレルギー反応による炎症が起こっていることが原因と考えると、
湿疹部に適切な外用薬を塗ることも必要です。

「ステロイド」
これは、皮膚の過剰な炎症反応を抑えるものになります。
よって、まさに皮膚症状がかなり強く、痒みも強い状態なのであれば、ステロイド外用薬を最優先して塗る必要があります。

きちんとステロイドを続けていくと、皮膚の過剰な炎症は治り、痒みや赤みも徐々に引いてきます。

では、炎症がおさまったら、治療完了でしょうか??
答えはNOです。

なぜならば、アトピー性皮膚炎の患者さんの皮膚は元々バリア機能が弱く、常にアレルゲンが入りやすく、かつ炎症が治ったかに見えても、皮膚内部ではまだまだ炎症が残っているのです。

急性期にひどくなった炎症が治ったが
まだ軽度にある炎症を抑えるためにはステロイドではない薬も登場しています。

20年ほど前から保険適応になっている「タクロリムス」
その他「デコルニチブ」「ジファミラスト」
これら3剤です。

これらはまさに急性に皮膚が炎症を起こしている時には、抑える力が少ないのですが、
そもそも炎症を起こす号令をかける細胞やサイトカインと呼ばれる物質を抑えて、これ以上炎症を起こさないように働きかけるのです。

アトピー性皮膚炎は薬を中止すると症状が出てくるといったとても厄介な疾患です。
ついには薬を塗っても結局また出てくるならば、治療をしたくないという患者さんもいらっしゃいます。

ただ、適切な薬を根気良く使って治療をすれば、必ずや改善します。

そして今日お話しした薬だけではなく、治療方法も選択肢がかなり増えてきました。
色々な選択肢の中からこれならば続けられそう。という治療法を探してみても良いかもしれませんね。