2023/11/28

院長日記

「水ぶくれ」

今回のお話は「水ぶくれ」です。

日常的に「水ぶくれ」ってよくできますよね。

では俗にいう「水ぶくれ」ってなんでできるのか?
皮膚科的にお話しをすると、皮膚の「表皮(ひょうひ)」と「真皮(しんぴ)」の間に水が溜まった状態です。
皮膚を断面図で見ると、皮膚の一番外側、つまり私たちの目に触れている部位を「角層(かくそう)」と言います。
この「角層」を皮膚の1階とすると、その下の地下1階が「表皮」。
地下2階が「真皮」。
地下3階が「脂肪層」となります。

地下1階の「表皮」と地下2階の「真皮」の境い目は、波のようになっています。
このことで皮膚の表面や横からの圧力がかかっても、表皮と真皮が容易に剥がれないように、この波状の構造が吸収してくれているのです。
しかし、繰り返しの圧力が皮膚にかかると、さすがにこの波状の構造も破綻し、表皮と真皮に隙間が開いてしまうと、この中に「リンパ液」が入り込み、「水ぶくれ」が発生します。

靴擦れ、鉄棒やゴルフの練習などである特定の場所に圧力がかかって「水ぶくれ」ができた経験があるはずです。

そのほかにも「やけど」で水ぶくれができることもありますね。
これも、まさに火傷の炎症が地下1階の「表皮」にとどまらず、地下2階の「真皮」まで及んでいるということになります。

さて、こういった日常的な「水ぶくれ」だけではなく、「水疱症(すいほうしょう)」という疾患も皮膚科医は診察しています。
地下1階の表皮細胞達を繋ぎ止めている接着剤の役目のある物質を攻撃する特殊な抗体ができる疾患、「尋常性天疱瘡(じんじょうせいてんぽうそう)」

地下1階の表皮と地下2階の真皮の堺い目の波状の構造を破壊する特殊な抗体ができてしまうことによる疾患。「類天疱瘡(るいてんぽうそう)」
これらは2つの疾患は時に内臓の腫瘍が隠れていることから出現することもあります。

また、「水疱症(すいほうしょう)」は薬剤アレルギーで発症することもあります。
その他にも先天的(生まれつき)に地下1階の表皮細胞達をつなぐ接着剤が体から産生されない疾患もあります。「先天性表皮水疱症(せんてんせいひょうひすいほうしょう)」

また、「ネコノミ」に刺されて、主に足のすねに沢山の水ぶくれができる疾患も時々遭遇します。

「水ぶくれ」といっても、色々な疾患があるんです。
皮膚のことは皮膚科専門医にいつでもご相談ください。