2025/10/28

院長日記

長く続く「蕁麻疹」その治療は?

今回は「特発性慢性蕁麻疹(とくはつせいまんせいじんましん)」の治療についてお話しします。

そもそも、「蕁麻疹」というと、大体の方が「アレルギーが原因でしょう?」と思われるかと思いますが、

アレルギーで出るタイプの蕁麻疹は数%とかなり少ないのが現状です。

もちろん、エビやカニなどの甲殻類や青魚、イカなどを食べて突然全身が痒くなってきた。

または、青身の魚を食べた後にたまたま魚に寄生する「アニサキス」が体に入り、急激な腹痛と共に急激に全身が痒くなってきた。

小麦製品を食べた後に運動や血流が良くなる動作をして痒くなってきた、

といった場合にはアレルギーを疑いますが、

何週間も原因もなく、体に出没する蕁麻疹はアレルギーの可能性は少ないでしょう。

特に6週間以上、蕁麻疹が毎日の様に出てくるタイプを「慢性蕁麻疹」といいます。

そして、この慢性蕁麻疹は実に70%以上が原因が不明です。

さて、蕁麻疹の治療についてお話しすると、

そもそも蕁麻疹は皮膚の内部にある「肥満細胞(ひまんさいぼう)」から「ヒスタミン」という物質が放出されることで皮膚の痒みを生じます。

よって、ヒスタミンを抑える薬「抗ヒスタミン剤」を内服して治療します。

「抗ヒスタミン剤」にも何種類かあり、

皮膚科医はどの薬が患者さんに効くのか、

また、生活パターン、職業、年齢、妊娠授乳しているか、なども考慮しながら、適切な薬を選択します。

また、内服しても治らない場合には、再診されたときに蕁麻疹の出方をお聞きして、必要があれば薬を変更したり、量を増やしたりします。

それでも改善しない場合にはステップ2として、補助的に内服する薬を処方することもあります。

ステップ2を試しても、効かない場合にはステップ3として、注射薬の検討をします。

難治性の蕁麻疹で使用する注射薬には2種類あり、一つは「オマリズマブ」もう一つは「デュピルマブ」です。

「オマリズマブ」は成人及び、12歳以上の小児が使用可能。

「デュピルマブ」は成人のみ適応となっています。

さて、慢性蕁麻疹の原因は不明と言われても、「なんだか腑に落ちない。」と思われる方もいらっしゃるかと思います。

最近では慢性蕁麻疹の原因は「自分の体内にあるなんらかの物質に体が反応している」ことがわかっています。

つまりは「自分の体の何かに敏感に反応して、アレルギーの様な症状が出ている」ということです。

その「何か」は採血では突き止めることができないため、原因はわからないということになるのです。

毎日の様にあちこちと体のどこかが痒くなる蕁麻疹。

眠れない、仕事や勉強に集中できないなど、生活の質も落ちてしまう疾患です。

中々治らない辛い蕁麻疹は皮膚科専門医にご相談ください。